第2期北陸トーナメント決勝観戦記
11月1日、富山県にて第二回北陸トーナメント選手権の決勝戦が開催されました。
この北陸トーナメント選手権は北陸支部にて昨年新たに立ち上げたタイトル戦。
これまで北陸支部主催で開催する大会で、一般の方が参加出来る大会は北陸プロ・アマリーグ帝陸戦しかなかった。
コロナ禍も経て、なにか他に一般の方々と真剣勝負が出来る大会を増やせないかなぁ、と支部員で話し合った。それではトーナメント戦はどうだろう、と話が持ち上がり、立ち上げる運びとなった。
一般参加及び支部員が一戦一戦火花を散らし、勝ち上がっていくシステムに、一戦ごとに大いに盛り上がりをみせ、大好評で終わった。
今回もたくさんの参加者の中で行われた。
第一回に引き続き決勝観戦記を執筆させて頂きます、北陸支部長の浦田です。
二回連続で執筆するという事は、連続で負けている(しかもシードなのに)事は明白ですが、一生懸命書かせて頂きます。
激闘の中、決勝に勝ち上がった四名は一般参加からは相澤さん・野道さん、 プロからは松原・宮成。
写真左から野道さん、松原プロ、宮成プロ、相澤さん
誰が二代目チャンピオンに輝くか!?
【一回戦】
東一局
宮成の一人テンパイと静かな幕開け。
対戦前に選手の皆様にインタビューをお願いしたのだが、「自分の麻雀スタイル・雀風を一言でいうと?」という質問に対し、相澤さんの回答が
「ナックルボール型」
ん!?初めて聞いた雀風。
ナックルボールをネット検索で調べてみると、「野球における球種の1つ。可能な限りボールの回転を抑えた形で投じられ、捕手に届くまでの間に不規則に変化しながら落ちる変化球である。」
投げた本人もどこに落ちるか分からないというこの球種、麻雀に置き換えるとどういう事だろう?
「着地点を定めないポンで、周囲に必要以上の警戒心を煽り自摸回数を稼ぐ。
高くなるか早くなるかは自摸次第。」
という本人からの補足説明。
なるほど、確かに相澤さんは鳴きを多用するスタイルだという印象があったが、そういう事だったのか。
よし、しっかりと球筋を見極めていこう。
東二局一本場
親の相澤さんが早々2巡目に仕掛けていく。
ドラ5
ここからオタ風の南をポン。
早速「ナックルボーラー・相澤」が発進する。
この手は何処に着地するのか?
一番鳴きたい肝心の中は宮成と松原に一枚ずつ。ここは連荘が精一杯かと見ていたが、テンパイが入った宮成から中が放たれて、テンパイを入れる。
そしてツモ。
ツモ6 ドラ5
しっかりとホンイツに仕上げて2,600オール。
いきなりナックルボール型の本領発揮である。
東二局二本場
ここも相澤さんは序盤2巡目に1ソウをポン。
今回は配牌からホンイツの色が濃いのだが、周りからしたら本手かブラフか判別しにくい。
白も鳴けて下記のテンパイ。
ドラ九
応戦体制の野道さんはイーシャンテンからドラ九が重なる。
ツモ九
ドラ九
ここから打6で相澤さんに掴まってしまう。
相澤さんがソウズのホンイツなのは百も承知の野道さん、ここは打点MAXの強気の勝負だったが、結果は裏目となってしまった。
放銃した野道さんも対局後この局が一番の反省点に挙げられていて、悔やまれる一局となった。
東二局三本場
乗ってきた相澤さんに対し、なんとかこの親番を落とそうと立て続けにリーチがかかる。
松原リーチ
野道さんリーチ
どちらも七対子のドラ待ちリーチ。
しかし、この2軒リーチに相澤さんが更に被せてくる。
相澤さんリーチ
なんと奇しくも相澤さんもドラ絡みの待ちとなった。
三者がドラにまつわるリーチとなったが、ここも相澤さんが野道さんより八万でアガリを果たす。
東二局四本場
3軒リーチを制してノリノリの相澤さんは、この局も気持ち良くリーチ、高目ピンフ三色の手だが、いとも簡単に高目をツモアガり、親満を追加。
持ち点六万点突破と相澤さんの勢いが止まらない。
東二局五本場
松原が本日初アガリで、やっと相澤さんの親を落とす。
東三局
親の宮成、先制リーチをかけ、こちらも本日初アガリ。
南一局
相澤さんが野道さんより満貫をアガり、持ち点を七万点台にのせる。
南二局
まだ一回戦とはいえ、これ以上離されてはかなり不味い状況。
この相澤さんの親番は何としても一局で終わらせたい。
そんな思いの宮成が先制リーチ。
これに対して相澤さんは守るつもりは毛頭なく、イーシャンテンながら押していく。
ここは宮成がメンピンドラ1の3,900点を相澤さんより和了。宮成は次局の親番に期待を馳せる。
南三局
そんな宮成の強い思いに手がついてくる。
配牌でドラが2枚あり、中を一鳴きすると、もう一枚ドラを引いて来て、その後下記のテンパイ。
ドラ四
待ちが絞りにくいこのシャンポン待ちに相澤さんから④ピンが放たれる。
宮成、値千金のデバサイ11,600点の和了。
宮成も持ち点を四万点とし、相澤の対抗馬に名乗りを上げる。
対局前のインタビューで自分の長所を「たくさん押せるところ」と述べられた宮成。
その言葉通りに今大会、次々と先輩プロをなぎ倒して決勝進出を果たした、ここ一番の強さが売りの宮成。
桜蕾戦を二度優勝した実績は周知の事実だが、今期は見事女流桜花Aリーグ昇級を果たした。
来期は女流桜花獲得を目指されます。
皆様、放送対局で是非とも応援をお願い致します。
南三局三本場
ここも宮成が役牌ドラ2の5,800点を松原からアガり、相澤に迫っていく。
南四局一本場
宮成に11,600点を打った相澤さんだが、ここから崩れる事なく、このオーラスもメンピンドラ2を野道さんよりアガり、大きなトップスタートとなった。
一回戦終了時
相澤 +48.9
宮成 +17.8
松原 ▲15.2
野道 ▲51.5
相澤さんの大きなトップで終えた一回戦。他三者としては相澤さんの連勝だけは避けつつ、自分が迫りたい。
東二局
相澤さんの親、ダブ東を2巡目にすぐ鳴けて、タンキ待ちの選択もハマり1,300オール。
東二局一本場
相澤さんの連荘、8巡目に発が鳴けて、野道さんより2,900点の和了。
なんとか相澤さんの親を落としたい三者だが、連荘が続く。
東二局二本場
相澤さんの手牌
ドラ⑤
ここから2巡目にオタ風の南を仕掛ける。
その後西もポン
宮成と松原はダブ東が一枚ずつ浮いており、全く前に進めない。
そんな他者を尻目に悠々と手を作る相澤さん。
下記のテンパイから四を打ってテンパイ。明らかにマンズでテンパイ明白だが、お構いなし。
まさに「ナックルボールの使い手」相澤さんの真骨頂だ。
しかし丁寧に安全牌を落として回っていた宮成にテンパイが入る。
八万はかなり危険な牌に見えるが、ここは勝負でリーチ!
一回目のツモで見事高目四をツモり上げる。
相澤のナックルボールを粉砕し、親被りさせての2,000・3,900ツモ。
本人もこの局を快心の局に挙げられていた。
まさに「強気のさくちゃん」ここにアリだ。
東三局
ここまで本日まだ一回もアガリのない野道さん。
野道さんの今大会の粘り腰・終盤の爆発力は凄まじく、一次トーナメントでは地和和了、ベスト16では最終戦南3局の時点で30ポイント以上の差から、起死回生の四暗刻ツモで逆転するなど、今大会二回も役満をアガって勝ち上がっており、まだまだどうなるかは分からない。
私自身、二次トーナメントで野道さんと対戦し、しっかりと負けてしまいました。
そんな野道さん、この親番でリーチのみながら和了し、嬉しい本日初アガリ。ここから巻き返すか!?
東四局
親が落ちた野道さんだが、この局は役役ホンイツドラ1の満貫を松原より和了する。
南一局
野道さん、ここも一手変わり三色を待たず、積極的にリーチをかけて、相澤さんより1,300点の和了。
安いけれど、相澤さんペースだった一回戦からの脱却が実感出来る嬉しい和了である。
南二局
乗ってきた野道さん、またしても先制リーチをかける。
ドラ西
高目イーペーコーの本手リーチだ。
これに親の相澤さんが追っかけリーチ。
ドラ西
役もドラもない、一見苦しいリーチ。
野道さん有利かと思えたこの局面、宮成から3軒目のリーチがかかる。
ドラ西
ドラ暗刻のリーチ!本物はここだったのか!?
と思った瞬間、野道さんのツモは六…。
なんとこの局を制したのは一番不利に見えた相澤さんだった。
しかしながらいくら親だからといってこの追っかけリーチを打てるのだろうか?
ここ何局かは押されているのは明白な野道さんからの先制リーチでもある。
しかし、打てたこその結果である。
私なら追っかける事が出来ず、野道さんか宮成から親被りをさせられてしまった未来だと思えずにいられない。
全員の手が見えている観戦者の私ゆえ、この瞬間に早くも「相澤さん優勝」が頭に浮かんでしまう…。
南二局一本場
完全に息を吹き返した相澤さんは、この局もリーチをかけ、野道さんの追っかけリーチも何のその、一枚切れの高目の東をあっさりツモり上げる。
この時点でこの半荘も相澤さんがトップ目に立つ。
相澤さん、強い!
南四局
トップ目の相澤さん、決してここもサボらず、発を鳴いて自力でトップを決めにいく。結果、相澤さんの一人テンパイで思惑通りで終える。
相澤さん二連勝。
前半戦の二回戦までが終了した。
相澤さん +69.6
宮成 +26.3
松原 ▲21.3
野道さん ▲74.6
相澤さんの二連勝。
宮成も決して調子が悪いわけではないが、相澤さんが強過ぎる印象。
松原はなかなか手が入らず、どうしても相澤の仕掛けに対応せざるを得ない状況。
野道さんはチャンス手は入るものアガリには結びつかず苦しい。
とにもかくにもこの三回戦は相澤さんを沈めたい。沈めなければならない。その上で自分が大きなトップを取りたい。
ある意味、目的がハッキリした三回戦がスタートした。
対局中の写真↓↓
写真左から宮成プロ、相澤さん、野道さん、松原プロ
東一局
相澤さんが中盤カンチャンで4ソウをチー。それを見てここまでは丁寧に受けていた親の宮成、ここが勝負処と見てイーシャンテンからドラの中をリリース、強気の一打を放つ。
結果は相澤さんがタンヤオのみをツモる。相澤さんがひと息ついた感じを受ける。
東四局二本場
宮成が役牌の中が暗刻で、②ピン、⑧ピンとポンしてホンイツ一直線。
すると野道さんがドラ暗刻で三メンチャンのリーチを打つ。
これは野道さんとしては手応え十分のリーチであろう。
そこへ相澤さんも追っかけリーチを打ってくる。
なにか場がどんどんヒートアップしてきている感じである。
三つ巴かと思われたが、この局を制したのは親の松原。
難しい選択もクリアして1,000オールをツモり上げる。
東四局三本場
例によって?相澤さんがバラバラの手から9ソウをリャンメンでチー。
その後ペン③もチーしていく。
ちなみにまだリャンシャンテンだが、お構い無しであろう。
終盤、親の松原がリーチ。
先程四つ巴を制しているので、ここは勢いに乗りたい。
そこへ宮成が二枚切れの西を打つと、相澤さんから「ロン」の声。
ロン西 ドラ七
本日の決勝で、相澤さんは何回もアガリを重ねているが、対局後「快心の一局」をお聞きしたところ、この西タンキの3,900点を挙げられた。
そして、宮成にも「悔しい局」をお聞きしたところ、同じくこの局を挙げられた。
宮成は数巡前に西を対子落としをしていったのだが、一枚他の牌を挟んでしまったらしい。手順次第では防げた放銃だけに、悔しさもひとしおなのだろう。
南二局
三回戦は宮成一人沈みで、他三人が接戦の模様。
相澤さんにドラ白対子のチャンス手が入る。当然ながら何処からでも仕掛けていく気満々なのだが、鳴ける牌が出ず、12巡目に面前でテンパイしてしまう。
ここにジャストミートで松原が飛び込んでしまう。
相澤さん、このアガリでまたしてもこの回トップ目に立つ。
南二局一本場
相澤さんの連荘がまた始まり出す…。
そんな予感を吹き飛ばすべく、宮成がシャンポン待ちのリーチのみを敢行。もうカタチなど構っていられない。これ以上の相澤さんの連荘は阻止しなければならない。
しかし相澤さんはお得意の鳴きを駆使して、タンヤオドラ1の2,900を松原からアガる。
南二局二本場
なんとしても相澤さんの親を落としたい宮成、序盤から⑨ピンをポンしてホンイツへ向かう。
これに対し、相澤さんは役牌(白)の後付けで、2ソウと六マンをポンしていく。白が宮成と持ち持ちであった場合は大ピンチだが、ナックルボーラー相澤さんはそんな事何処吹く風。
宮成、中と北のシャンポンでホンイツをテンパイするも、手を開けたのはまたしても相澤さん。
手元には白が微笑んでいた。
なにか全て相澤さんの思う方向に事が進んでいっている。
気が付けば、またしても相澤さんの持ち点が五万点を越えている。
南三局二本場
相澤さん、今日何度目か分からない後付けのチー発進。
しかし、この局大物手をアガったのは松原。ダブ南トイトイドラ3のハネマンを野道さんよりアガり、この半荘の相澤さん三連勝を阻止すべく立ち上る。
普段は裏方に回る事が多い副支部長の松原。
今大会、松原が決勝に勝ち残った瞬間、「前回第一回大会は藤本副支部長の優勝、もしかしたら今回は松原副支部長の番なのでは?」と感じた。
準決勝ではその藤本を最終戦の見事な逆転劇で倒した事も、そう思った一つの理由。
松原の特長は「忍び寄る打ち方」。
その規則的に淡々と打ち進める一打一打は難解な局面でも決して揺らがない。
なのでテンパイ気配が読みにくい。
点数が高いか安いか分かりにくい。
その打ち方は熟練の賜物で、今大会決勝戦に勝ち上がられたのも決してフロックではない証明である。
南四局
そんなラス親の松原、11巡目にリーチ。手役はリーチドラ1と高くはないが、この親は絶対終わらせない!という気合いのリーチ。
終盤16巡目、この半荘大きく沈んでいる宮成が追っかけリーチ。
松原のツモは暗刻の1ソウ。これを暗カンし、リンシャン牌に手を伸ばすと、そこには松原のアガリ牌ではなく、宮成のアガリ牌が眠っていた。
宮成、満貫をアガり、ラスは変わらずながら失点を少し取り戻して三回戦を終える。
このリンシャン牌からのアガリをどう捉えるか?
いよいよ最終戦へ。
対局中の写真↓↓
写真左から野道さん、松原プロ、宮成プロ、相澤さん
三回戦までが終了し、この決勝戦も残すところあと最終戦のみとなった。
三回戦終了時
相澤さん +77.0
宮成 +9.8
松原 ▲28.8
野道さん ▲78.0
相澤さんが圧巻の三連勝で、栄冠に手が届きかけている。
一番近い宮成でも最低六万点以上の大トップ、かつ相澤さんを大きく沈めたラスにする必要がある。
松原と野道さんの条件は更に厳しい。
でも三人とも誰も諦めてはいない様子。
流石ここまで勝ち残られた強者、「諦め」という文字はないらしい。
そして、相澤さん。波乱が起こらなければほぼ優勝ではあるが、麻雀は何が起こるか分からないという事は、熟練の相澤さんなら当然熟知しているであり、油断はないとは思われる。
最後の半荘がスタートする。
東一局
起家の宮成はとにかくこの半荘の二回の親を絶対離すわけにはいかない。
ドラ五
一通と三色の両天秤、ハネマンまで見えるチャンス手に六万を引き、5ソウ切りリーチ!
ドラ五
これでも高目のドラをツモれば4,000オールのスタートだ。
先ずは一の矢を放つか!?と思った時、相澤さんがリーチ宣言牌の5ソウをポン!ワンチャンスの⑥ピンを勝負して応戦体制に入る。
流石このあたりは勝負処を熟知している相澤さん。
ポンせずに安全牌にして打ち進めても良い、まだまだ点差は大きい。
ワンチャンスとはいえ、大物手を直撃という事になれば一気に点差が縮まる。
なので、とりあえずポンせずに打ち進める打ち手も多いのではないか?
でも相澤さんは、この親は自力で決着をつけなければならない事を知っている。
結果はなんと鳴かなければ宮成がツモるはずであったドラの五を見事喰い取り、相澤さんのツモアガリ!
ツモ五 ドラ五
強過ぎる!
私が卓に座っていたら5に反応出来たか?
⑥をしっかりと勝負出来たか?
まだ東一局が終わったばっかりだが、さすがにこれは勝負アリとなった。
南一局
最後の宮成の親番も相澤さんが役なしカンチヤン待ちリーチで、山に残り一枚のカン7を力強くツモり上げる。
最後の最後まで手を緩めない。
オーラス
三者ほぼ厳し過ぎる条件しかなく、宮成の役満直撃ぐらいが唯一現実的な条件か?
ドラ5
宮成、ここから②ピン⑧ピンと持ってくれば条件は満たす。
最後の宮成の意地を垣間見たような気がした。
しかしここまで、流局となる。
第二回優勝は相澤さん!
圧巻の四連勝で、正にお見事の一言でした。
以前、巷に凄く強い打ち手がいらっしゃるとお聞きし、それが相澤さんだというお名前と知った。
その相澤さんが帝陸戦に参戦される事になり、私は密かに後ろ見をして、その強さの片鱗を垣間見たのを思い出した。
ただその強さは本当に片鱗だったわけで、今日は片鱗どころか思う存分、相澤さんの本当の本物の大いなる強さを魅せて頂きました。
終始本当に強かったです。
相澤さんはご自身でお仲間と連盟公式ルールの私設塾を運営されており、その愛好家の方々と日々完成度を高めるべく、切磋琢磨されているとの事です。
対局中、相澤さんから負けられないという気持ちの強さがひしひしと伝わったのは、そのお仲間のためにもという思いもあったのではないでしょうか?
第二回も大好評で幕を終えた北陸トーナメント選手権。
第三回もまた実施の予定ですので、また奮ってご参加の程、何卒宜しくお願い申し上げます。
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